2018-12

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【松】接触編(42/ジェイカラ)

いつか見た馬車を、いまもときどき思い出す。 一頭の馬、御者は一人。天蓋はなく、乗っている全員の姿が見える。 華美でない装飾は着飾って見せる必要のない裕福さの表れで、それに乗る小柄な男はどこか満足げな表情をしていた。恐らく父親だろう、彼は隣に座る子供の手を握っていて、子供はその手を...
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【松】夜の談合(42/ジェイカラ)

「お前、夜、眠らないんじゃなくて眠れないんだろう」 今日は満月、カンテラの明かりだけで手紙を読むには十分だ。俺がそうきり出せば、自称夜の主は楽しげに眼を細めた。 なぜそう思う、とわざわざ聞いてもこないところが厭らしくて、たまらなく不愉快だった。 「よくわかったな、市松」 「……一...
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【松】「頼むから離れないでくれよ」(32)

窓を背にしている。横目で外を見れば、街は花曇りの薄い灰色の雲に覆われていて、遠い故郷の桜を思い出させた。桜が咲き出す頃の空は、なんだか色彩が薄くてはっきりしない。コントラストが低いそれは既に遠い過去のものだ。 机の上には山のようにプレゼントの小箱が載っている。大小様々なそれは、ホ...
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【松】セラヴィ(62)

セラヴィ、の言葉を教えてくれたのはイヤミだった。 耳慣れない言葉の響きに、どういう意味なのと尋ねたのはほとんど反射だ。嫌味ったらしくて金に汚くて子供にだって本気でかかってくるような大人に聞いてもきっと答えは返ってこないと知っているのに、好奇心に負けた。イヤミは片方の眉を上げ、一張...
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【松】手紙(52)

十カラワンドロ【手紙】 「十四松、代わりに書いてくれ」 サインペンと一枚の絵葉書を渡すと、十四松は目をきょろきょろさせて、それから僕が書くのと俺に聞いた。この部屋には俺と十四松しかいなくて、差し出したそれはを受け取るのは自然と一人だけになる。 お前だよと念を押すように言ってやる...
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【松】「ぼくをみて」(62)

言い訳をしようとして、唾を飲み込んだ。 僕の足元にはガラスのケースだったものがある。砕け散ったそれの中身は飴玉で、そこらに飛び散ってしまっていた。ガラスの破片が、何が起こったかは見ればわかる状況を作り出している。 喉が少し痛かったから、飴を食べようと思っただけだった。 ガラスのケ...
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【松】じゃのめとはなにか(52)

雨の日にわざわざ外に出るやつの気が知れない、というおそ松の苦言を背中にして家を出た。 十四松はこの間の風が強い日に合羽を破いてしまって、新しい合羽を買ってもらったばかりだった。俺はレインブーツを新調したばかりで、逆に言えば雨が降っていないとこの外出に意味はない。 「あめあめふれふ...
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【松】モノクロ(62)

隙間風で障子がかたかた揺れている。そっと押さえてみたけれど、手を離した瞬間にまたかたかたと鳴り出してしまうから諦めて手を離した。風は勢いを増すばかりでまったく止む気配がない。さらさら、さらさらと窓を滑っていく雪の音を聞いていると、このまま家の中に閉じ込められてしまうんじゃないかと...
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【松】凍った指先溶かす場所探してます。(62)

指先がきんきんに冷えてもげそうだった。 冬らしくない陽気が続いています。先週あたりのお天気ニュースはそんなことばかり言っていたけど、昨日から急に冬らしい冬がやってきて猛威を振るっている。 おそ松兄さんがこたつから出ないし、チョロ松兄さんはスーツの上にコートを着て面接にいく。十四松...
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【松】イメージソング(52)

「兄さん、どう、似合うー?」 ちゃぶ台に肘をついて、寝かせた鏡を見ている。そこには分裂した小さな十四松が座って、まじまじと自分の姿を覗き込んでいた。 小さな十四松が裸でいるのが寒そうに見えて、自らの手で作ったタンクトップの切れ端でポンチョのようなものを作った。そんなに大したものじ...
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