【松】凍った指先溶かす場所探してます。(62)

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指先がきんきんに冷えてもげそうだった。
冬らしくない陽気が続いています。先週あたりのお天気ニュースはそんなことばかり言っていたけど、昨日から急に冬らしい冬がやってきて猛威を振るっている。
おそ松兄さんがこたつから出ないし、チョロ松兄さんはスーツの上にコートを着て面接にいく。十四松兄さんがウィンドブレーカーを出したあたりで本当に寒いんだと僕も厚めのコートを引っ張り出した。
そこまではよかった。
手袋失くすとは思っていなかったのだ。あいにくポケットの浅いコートで、暖は取れない。せめて自分で自分の手をさすって紛らわせている。
普通の手袋だと、携帯の画面がタッチできない。昨年新調したタッチ対応手袋がコートのポケットからいつの間にか落ちてしまったみたいで、僕の指はかわいそうなくらい真っ赤になってこわばっている。SNSを見ている場合ではない。
お湯に入れて解凍しようか、それともこたつの中でじっくり暖めようか。お湯に入れて解凍するとすぐにほぐれるのだけど、まず程よい温度のお湯を作らないといけない。
一刻も早く暖めるなら、こたつの中でじっくりほぐすのが結構好きだ。じわじわと血が通う感覚が戻ってきて、暖かいのと生き返った感覚にほっとする。
「もげる~、もげちゃう~」
ようやく家にたどり着く。ほっとしながら家の扉に手をかけたまでは良かったのだけど関節がうまく曲がらない。開けるのも一苦労の有様で、ぎしぎし音を立てて開く扉の内側に駆け込んだ。このままじゃ本当にもげるかもしれない。
「ブラザー、ようやくの帰還か……今宵の旅路はずいぶん長かったようだな」
「……ッタイなも~、帰宅早々浴びせないでそういうの!」
たまたま居間から出てきたらしいカラ松兄さんに帰宅早々独特の言葉を浴びせられる。今すぐこたつに滑り込みたい僕としては、少々邪魔である。そういうときに限って絡んでくる間の悪さがカラ松らしいといえばらしいのだが。
「外は寒かっただろう、存分にその身を休め、暖めると良いさ」
あーはいはい、そうだねめちゃくちゃ寒かったよ。超寒い。
「凍りつかないうちにな……!」
びし、と僕を指差すカラ松の指先を、凍りついた手でがっしりと捕まえる。瞬間、今までかっこつけていた声音がひゃっと一音上がり、僕の手から逃げようと体を引く。
「寒いよぉ、ちょー寒かった!……ねぇ、兄さん、暖めてくれな~い?」
口元に意地悪い笑みを浮かべてやれば、その後僕が何をしようとしているかはさすがにカラ松兄さんにもわかるようで、ひくりと頬が動く。捕まえた手と反対の、いまだ凍った手で兄さんの項をがっしと捕まえる。
「と、とどまつ、指っ…!つべたあっ!」
「兄さんの首、あったか~い」
「はなしてくれ、ちょっと、トド松っ!つめ…つめたい、ひい」
じたじたと暴れる兄さんの体温で凍った指先が溶けていく。手のひらが解けたら次は手の甲、とひっくり返したらまた悲鳴。こたつより手っ取り早くて暖かい。なるほど体温って案外便利だと新しい暖かい場所を見つけた僕は、両手が温まって指先が自由に動くまで、カラ松兄さんの体でひたすらに暖を取った。 

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