text 【松】接触編(42/ジェイカラ) いつか見た馬車を、いまもときどき思い出す。 一頭の馬、御者は一人。天蓋はなく、乗っている全員の姿が見える。 華美でない装飾は着飾って見せる必要のない裕福さの表れで、それに乗る小柄な男はどこか満足げな表情をしていた。恐らく父親だろう、彼は隣に座る子供の手を握っていて、子供はその手を... 2018.12.19 text
text 【松】夜の談合(42/ジェイカラ) 「お前、夜、眠らないんじゃなくて眠れないんだろう」 今日は満月、カンテラの明かりだけで手紙を読むには十分だ。俺がそうきり出せば、自称夜の主は楽しげに眼を細めた。 なぜそう思う、とわざわざ聞いてもこないところが厭らしくて、たまらなく不愉快だった。 「よくわかったな、市松」 「……一... 2018.12.19 text