全身、重たい疲労感に取り憑かれている。レースの応援、マシン調整、その他諸々の後には脱獄の手立てを考えるときた。毎日やることがたくさんあって忙しい。明日も、明後日も、そうやって続いていくのだろう。
「毎日毎日、忙しそうでえいな」
「うん、やることがあるのは楽しいから」
一時の監獄暮らしにも慣れたものだ。ごつごつとしたベッドも毛布と自分の服を敷けば多少マシになったし、ろうそくの揺れる明かりは疲れた体の睡眠導入剤として最適だった。
「監獄を出て……カルデアに帰ったら、また夏が来て……」
夏だ。夏が来るのだ。毎年トンチキな騒ぎが繰り返される夏が、今年も来るはずなのだ。
ふと、違和感を覚えた。今年は、何年であっただろう。人理を修復して、その後のはずだから。
「……以蔵さん、今は何年だっけ?」
覚えているはずなのに、知っているはずなのに、思考に霧がかかってしまったようだ。もしかしたら疲労や眠気のせいかもしれないけれど、曖昧だ。
「そんなんは明日考えればえいろう、寝ろ寝ろ」
以蔵さんは面倒そうな顔をしながら、横になったわたしの背をとん、とんと叩く。赤子をあやすようなそれに、徐々に瞼が重たくなっていく。人間の体が心地よく感じるリズムなのだろう。
「……目を覚まさんでくれ、な? まだここでわしらあと遊んでくれるやろ、マスター」
それは一体どういう意味なの、と聞きたかった。なのに、わたしの体はすっかり眠ってしまっている。眠りに落ちる一瞬、以蔵さんの寂しげな横顔が見えた。今すぐ大丈夫って言ってあげたいのにできないまま、わたしの意識はふつりと途切れた。
【FGO】これはすべて夢なのでは
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