【FGO】ナポリタンを食べる以蔵とぐだの話

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 肩が凝ったし、首が痛い。タブレット操作のしすぎて手首も疲れた。もう限界だとマイルームを出て食堂へ急ぐ。こういうときは、ご飯を食べるのが一番だ。
「あ、以蔵さん」
「なんじゃ、お前も昼飯か」
「うん、もう資料作成疲れちゃって……」
 たまたま食堂で一緒になった以蔵さんと一緒に並ぶ。この時間は昼休みを迎えたカルデア職員と、肉体においての食と調理を楽しむサーヴァントで食堂は賑わいを見せている。
「以蔵さんは何食べるの?」
「今日はなぽりたんっちゅうのを食う」
「いいね!」
 英霊という存在、サーヴァントとしての肉体を得た時、今までの生活様式に寄せて生活をするひとと、新たなものを何でも取り込もうとするひとと、まあその他にも自由なひとがいる。以蔵さんは、カルデアに来てすぐの頃は閉じたタイプだったと思う。それが今では食に関して積極的なので、何だかおもしろい。
「おまんは何を選ぶがじゃ」
「うーん……わたしもナポリタンにしようかな、食べたくなっちゃった」
 トマトケチャップが焼ける甘い匂いはどうしてこんなに食欲を刺激するのだろう。口の中に広がる味を舌が期待している。
「同じのんか」
「うん、同じだよ」
「……ほうか」
 ふ、と以蔵さんが表情を緩める。なんだかその顔があんまり優しくて、やわらかいものだったから、ついどきりとしてしまった。そういう瞬間はカルデアにいると無限にあるものだけれど、その度いけないいけないと己を律さなければならなくなる。
「うまいもんを揃って食うのはえいなあ、マスター」
「そ、そうだね……」
 同じものを選んだだけなのに、そんなに喜んでくれることってあるのだろうか。わたしのほうが恥ずかしいんだけど、とつい文句を言いたくなってしまう。言わないけど。
「以蔵さん、一緒に食べよ」
「えいよ」
 わたしはわたしで、以蔵さんがご飯を食べる様子を微笑ましく見つめることにする。恐る恐る口に入れるところだとか、味を楽しむところだとか、そういう変化をかわいいな、と思うからだ。
「……赤いのう、辛いんか?」
「違うよ、トマト」
「トマト……ありゃ赤くて固いじゃろ、どうなっちょる」
 わからん、と愚痴る横顔はむくれていて、くすりと笑ってしまう。これは食べる様子も期待できそうで、わたしはうきうきと以蔵さんの後に続いた。
 ナポリタンを零して制服に赤いシミをつけてエミヤに怒られたのは、また別のお話。

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